エンジンはシリンダー内をピストンが移動することで動力を生み出します。
そのシリンダーとピストンの組み合わせのことを「気筒」と呼び、以下の記事でも解説しています。
エンジンはシリンダーの並び方(シリンダー配列)によって、車のサイズや重心に影響を与えます。
今回は「V型エンジン」の仕組みやメリット・デメリットを解説していきます。あわせて「直列型エンジン」と「水平対向型エンジン」とのちがいも比較してみましょう。

V型エンジンのメリットは乗り心地の良さ。高級車に多い
V型エンジンは気筒をV型に並べて組み合わせたエンジンのことです。
乗用車では6気筒以上で採用されることがほとんどで、その気筒数によってV6、V8、V10、V12などと呼ばれます。
気筒数が多いほどエンジン性能が良くなるため、V12にもなるとトヨタ・センチュリーやランボルギーニの車種などのエンジンに採用されています(現行型のセンチュリーはV8エンジン)。
V型エンジンのメリットは低重心と低振動
- ①多気筒でも高さがおさえられ、重心が低くなり安定する
- ②クランクシャフトが短くて済み、ねじり振動が少ない
①多気筒でも高さがおさえられ、重心が低くなり安定する
気筒は、エンジンの根幹ともいえます。そのため、気筒をどのように配置するかで車の性能や特徴も決まってきます。
V型エンジンは、その形状から高さをおさえることができます。
それによって車の重心が低くなり、安定した走行が可能となります。重心が高いと車体が風の抵抗を受けやすくなるため、ふらつきが発生したりします。
いわゆる”吸い付くような走り”というのは、重心の低さも大きく関係してくるわけです。
②クランクシャフトが短くて済み、ねじり振動が少ない
クランクシャフトとは、ピストンの往復運動を回転力に変えるための軸のことをいいます。
V型エンジンは、クランクシャフトを短く出来るため振動が少なくなるメリットがあります。
V型は高級車に採用されることが多く、コストは高くつきますが安定感のある運転が楽しめます。
振動が減るので、乗り心地は優れているといえるでしょう。さきほど紹介したトヨタ・センチュリーにV型エンジンが採用されているのも乗り心地を重視した結果といえます。
V型エンジンのデメリットはスペースとメンテナンス
V型エンジンは車好きにとっては嬉しい面も多いですが、正直ムダの多いエンジンでもあります。
V型エンジンのデメリットは以下のとおりです。
- ①直列エンジンと比べるとエンジン幅が広くなる
- ②部品点数が増えるためコストが高い(小排気量車には向かない)
直列エンジンと比べるとエンジン幅が広くなる
直列エンジンについてはあとでくわしく解説しますが、V型エンジンはその形状から横幅が広くなります。
そのため、V型エンジンはスペースを多く必要とするため、車内空間が犠牲になる(せまくなる)ことも少なくありません。
ただし、排気量を大きくしてもわりとコンパクトなサイズで収まるため、大排気量エンジンを積んだ車においてはV型エンジンのほうが好ましいとされています。
実際、世界中を見ても大排気量のエンジンにはV型が採用されています。
たとえば、以下のような車種にV型エンジンが搭載されています。こうしてみると、高級車やスポーツカーでV型エンジンが多く採用されていることがわかります。
- ・ロータス エキシージS
- ・マセラティ クアトロポルテS
- ・フォルクスワーゲン ゴルフR32
- ・ジャガー F-TypeS
- ・マクラーレン 650S
- ・フェラーリ 488GTB
②部品点数が増えるためコストが高い(小排気量車には向かない)
V型エンジンは6気筒以上の大排気量エンジンで採用されることが多いですが、それはつまり「排気量の多い車に向いている」ということです。
裏を返せば、国産の大衆車のような小排気量エンジンにV型は向きません。
V型は部品の点数が増えてしまうためコストも高くつくため、どうしても採用できる車種に限りがあります。
デメリットというよりは、V型エンジンが向かない車種が多いということです。
直列型エンジンのメリットと特徴
参考:CARZINE
直列型エンジンはその名前のとおり、気筒(シリンダーとピストン)を一直線上に配置したエンジンのこと。
気筒数によって、4気筒・6気筒などと呼ばれ、 直列型エンジンは6気筒以下で採用されるのが基本です。
気筒数が多いほど、車の排気量がアップするため加速や最高速度が向上します。
直列型エンジンのメリットは低コスト
- ①構造が簡単でエンジンのメンテナンスがしやすい
- ②多気筒だと爆発間隔が狭く、1気筒あたりの排気量も減りスムーズなエンジンを作れる
構造が簡単なのでエンジンのメンテナンスがしやすい
国産車にも多く採用されている直列型は、構造が比較的シンプルです。
シリンダーが一直線に並ぶため、部品点数も少なく低コストで生産できます。実際に、国産車をはじめとする大衆車の多くが直列型エンジンを採用しています。
また、エンジンのメンテナンスがしやすいというのも直列型エンジンの大きなメリットです。
直列型エンジンのデメリットは?
- ①気筒数が多いとエンジンが長くなり、エンジンルーム内に収めにくくなる
- ②2気筒、3気筒では振動が激しい
①気筒数が多いとエンジンが長くなり、エンジンルーム内に収めにくくなる
直列型エンジンはその構造上、エンジンルームの場所を多く取るのがデメリットです。
そのためエンジンルームの寸法や車のデザインも制約されるので、車づくりの自由度はどうしても下がってしまいます。
②2気筒、3気筒では振動が激しい
直列型エンジンは気筒数の少ないエンジンで採用されることが多く、振動が激しくなり乗り心地に悪影響をあたえることがあります。
そのためバランサーと呼ばれる装置が採用されることもあります。
最近では直列3〜5気筒までのエンジンが主流ですが、以前は直列6気筒エンジンもありました。
ちなみに直列型エンジンは以下のような車種に搭載されています。
- ジープ ラングラー
- トヨタ アルテッツァ
- トヨタ クラウン
- トヨタ スープラ
- BMW 1シリーズ
水平対向型エンジンの仕組みとメリット
V型エンジンのVの角度を180度にしたものを水平対向型エンジンといいます。
すべての気筒が水平になり、ピストンがボクサーのパンチのように動くので、ボクサーエンジンとも呼ばれます。

水平対向型エンジン(Wikipediaより)
トヨタ86、スバルBRZ、ポルシェ911などで採用されています。
水平対向エンジンのメリットは?
- ・V型以上に低重心となり安定度が高い
- ・直列エンジンと比べ冷却風を受ける面積が広く、冷却性が高い
水平対向エンジンはスポーツカーなどに採用されることが多く、低重心で運転しやすい特徴があります。
また、冷却性にも優れているので、車の性能を高いまま保つ運転が可能です。
水平対向エンジンのデメリットは?
- ・全体の幅が大きいので、車体に載せるときに制約を受ける可能性がある
- ・横置きエンジンにすると車の全長が長くなってしまう
V型と同じようにエンジンルームの場所を取るため、室内空間がせまくなります。
すべての車種に言えることではありませんが、全長が長くなる傾向もあります。
また、部品点数が多くなるためコストがかかるので、実際に水平対向エンジンを採用している車種は少数派です。
現行ではスバルの車種が水平対向エンジンを採用していますが、水平対向エンジンはもはやスバルのアイデンティティと言えるかもしれません。
水平対向ンジンを採用しているメーカーとしてはポルシェも有名ですね。
エンジンのちがいを知ると車がもっと面白くなる
あらためて車のエンジンについておさらいしておきましょう。エンジンは以下のの3種類に大別されます。
- ①V型エンジン
- ②直列型エンジン
- ③水平対向エンジン
それぞれがどのような特徴を持つか知っているだけでも車の見方や楽しみ方が変わってくるはず。
V型エンジンは多くのスポーツカーや高級車で採用されていることもあり、高い人気です。
直列型エンジンは低コストで作れるため、国産車などの大衆車などに多く採用されています。
水平対向エンジンは非効率な部分も多いですが根強いファンも多く、スバルやポルシェの車種で採用されています。
厳密には直列にもV型にも水平対向型にも細かい分類があります。とはいえ、ざっくりとそれぞれのエンジンについてちがいを知っておくと車の見方が少しだけ変わると思いますよ。